亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

……眩しい。



光が無くなり、そっと目を開けると………目の前には、凄惨な戦場が広がっていた。



部屋の面影など何処にも無い。椅子に座っていた筈なのに、今は三人共立っている。



その戦場の有様は、まさしく半年前の風景だった。

この時は両者共、およそ100人の犠牲を出した。


足元には、今は亡き兵士の屍が重なりあって地を覆い尽くしている。

………しかし、相変わらず音も無ければ、独特な腐臭も無い。
沢山の兵士が剣を構えているが………動かない。



“石の記憶”とは、ルアが見た風景の記憶そのもの。

その記憶を、立体的な映像の世界にすることが出来るのだ。


不動の幻影を目の当たりにしながら、キーツが口を開いた。


「……あそこが見えるか?……あの男が、第2部隊隊長……ゴーガン=カルジスだ」

キーツの指差す方には、兵士を背後から切りつけている男の姿があった。

刃渡り二メートルの片刃の剣を易々と振り回し、楽しそうに殺戮を繰り返している。