亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


刃こぼれしそうな勢いで、お互いぶつかりあった。

攻撃から攻撃へ。次の動作に移る際の間が殆ど無い。

ローアンの動きは一つ一つ大きいが、隙が無い。対してキーツはゆっくりとした動作だが、次の攻撃にすぐには移らせない様な重い一撃を連続して放ってくる。


「………互いに特質は違うが……なんだか形が似てないか?」

剣の構え方や動き………よく見ると、それはほぼ同じだった。何故、と首を傾げるリストに、オーウェンはポツリと呟いた。

「……………そりゃそうだ。…………………………あの二人の師は、同一人物だぜ?」






ローアンは屈みこみ、足払いをかけたが、これは避けられた。
頭上から鋭い一閃が降り懸かって来たのを、身をひねって回避する。
そこから逆立ちの体勢で起き上がり様に、見落としがちな相手の柄を握り締める手に蹴りを放つ。
そこでたいていの兵士は剣を落とし、がら空きとなった胴体に一閃を浴びせるか投げナイフを放つかするのだが、キーツは落とすどころか蹴りを受け止め、そのまま足を掴んだ。

ローアンの身体は男の腕一本で振り回せるには充分な程軽い。
キーツはローアンを地面に叩き付けようと腕を真下に振った。

「―――ちっ…!」

あっという間に反転する視界。このままでは固い地面で背中と後頭部を強打するのは必然。

舌打ちをし、とっさに剣を両手で握って頭の上に振りかぶった。
地面に垂直に構えられた剣の刃先は、ローアンの身体が地面に打ち付けられるよりも早く、地面に突き刺さった。

剣が支えとなり、直撃は免れた。

体勢的に不利だが、挽回は出来る。そのままグルリと後転しようとした途端………。



………喉に刃があてられた。