亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「ああ、そうだ。“闇溶け”は身体全身を細胞単位で空気中の闇に同化させ、視界などの五感から完全に姿を消す能力だろ?………つまり、闇に溶けている時は身体の全機能は停止していることになる。臓器も何も無いからな。……それを毎日、何年も、どんな移動の際でも使ってみろ」

アレクセイに切ってもらった果実をポイッと口に放り込んだ。

「この通り、私の様になる。……食事は最低限半年に一回で充分。水分は十日に一回位だな。………だから、飢え死にすることは無い。有り得ないな。まぁさすがに“闇溶け”をしなくなって一週間以上も経てば……食欲なんぞも出て来るか……」

「どおりで………アレスの使者には肥満体がいないのですね……若干、実年齢よりも若い様にも見えます。………こうやって考えますと……便利ですな」

「………人間らしくなくなるがな……」


そう言ってまた、窓から荒地を見下ろした。

リストを相手に、キーツは自分から攻めようとはせず、剣を受け止めたり撥ね除けたりと受け身の姿勢だ。

教えているのだろう。
その二人はまるで、師弟の様で………。













―――…刀身を真直ぐ、垂直に。…………爪が甘いぞ。




―――…たあぁ!!




―――…そうだ。今のは良い一撃だ………トウェイン。





























………二人の姿が、あの頃と、重なった。
















「……アレクセイ、ご馳走様だ。………食後の運動にでも行ってくる」

「はぁそれは良い事で………………ローアン様……?」