……まるで血が通っているかの様な、生々しい枝。
枝はグネグネと蠢き、ブルッと身を震わせた。
刺さっていたナイフは刃を押し返され、カラン…と床に落ちた。
「……………寄生体を守る寄生植物……か。……へっ……良い武器だな」
「………ええ。………ずっと、色んなものから守ってくれるから………怪我なんてここ数年したことなんか無いわ…………………優しいでしょ?」
徐々に右足に引っ込んでいく枝を撫でながら、ニコリとマリアは笑った。
「―――何のつもりだ…」
…突然、透き通る様なテノール声が聞こえたかと思うと、イブ達の前に冷たい闇が靄の様に現れた。
……“闇溶け”を解いて現れたのは、一階の広間にいる筈のベルトークだった。
足元に落ちているナイフをちらりと見下ろし、そのまま視線をオーウェンに向ける。
「…………不意打ちかオーウェン=ヴァンニ?………えらく好戦的になったものだな」
「……冗談。………ちょいと試したかっただけだ。急所は狙ってねぇよ。……勘違いされると困るねぇ。あんたらの大事な武器の性能が気になってたんでね……」
「………よく言う…」
ベルトークは横目でマリアを見やった。…マリアは、大丈夫です、と微笑を浮かべて頷いた。
………その様子を見ながら、オーウェンはちょっと驚いた様にニ、三度瞬きをした。
「…………あんた…………本の少しだけ……変わったな………」
「………何の話だ。…………我々はそろそろ失礼させてもらう…」

