亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


ローアンを残し、三人は部屋から退室した。

「あーん、もうちょっと時間欲しかったな―…五分は短いよ―」

「贅沢言っちゃ駄目よ。ここに来るって事だけでも、物凄くお願いしたじゃない」

「それはそうだけど―……ベルトーク隊長はやっぱりケチ………」

ペラペラ喋るイブの口が、ピタリと止まった。前をじっと見たまま静止している。
後の二人は、イブの視線を辿った。

その先には……。












イブを睨み付けている少年が一人。ダリルと同じ位の背丈だ。


………第3幹部のリスト=サベス……。


「………な~んだ……あんたか。………そうやって睨み付けるの止めてくれませんか―?穴が空いちゃう~」

「………」

終止無言なリスト。イブは両手を腰にあて、ふー…っと溜め息を吐いた。

「………何よ?……この廊下はフェーラ禁止区域なわけ?だったら先に言ってっての~。………あ―うざうざ~」

「………さっさと……出て行け…」

絞り出した様な小さな声。憎悪に満ち溢れたリストの態度に、イブは顔をしかめる。
後でマリアがオロオロとしている。

「………喧嘩売ってんの甘ちゃん?………良いよ~買うよ?………戦場でね。……そのお首をしっかり洗ってなさ―い。噛み付いてやるから。………あ、でも不味そ~う」

リストの表情が一気に険しくなった。

「…………貴様……!!」

「……何この後ろパッツン」

「――後ろパッツン!?」


この険悪なムードをたった一言でぶち壊したダリル。
リストを指差しながらボソボソと言う。