亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「……兵士達には、充分な食事と睡眠を与えてやれ。……武器の切れ味の確認もな。今日からワイオーンには食事を与えるな。……飯は敵兵共だ…」

「おーっす……」

オーウェンは頭をわしわしと掻きながら言った。



現在の敵の情報を知る必要がある。
アレスの使者は殆ど暗闇に紛れて攻撃してくるため、主要人物の姿をなかなか確認できない。
まだ顔が割れていない人物もいるのだ。

キーツは、それについては一つ解決した、と二人に答えた。

「……敵の主要人物についてだが………ある程度は把握出来た」

「……本当ですか?」

「ああ。………前回の襲撃の際…ルアが全容を記憶していた………おいで、ルア」

その瞬間、キーツの傍らに、真っ白な獣が現れた。

可愛らしく尻尾を振って、きちんと座っている。



…………見るからに神秘的で、高貴な雰囲気を醸し出すこの獣は、妖獣でもなければ魔獣でもない。






―――この国では大変珍しい、聖獣“ネオマニー”である。