亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

街の中央はまるで迷路の様に入り組んでいた。
昔は整備されていたんだがな…とぼやきながら男は暗がりに進む。
足下はガラクタの山で、盲目であるダリルを気遣ってか、男はゴミを退かしながら進んでくれている。
…が、ダリルにとってはそれは余計なお世話であって、気遣われている当の本人はそれを無視して男を追い越して行く。


………ゴミ屑や野鼠を見掛けるならまだしも、道の両端には、酔いつぶれた男や独り言を呟く老人が転がっている。

………随分と治安が悪い様だ。

住むなら田舎、暇つぶしには都会だ。



「………あそこだ。………これからずっと出入りする場所だ。迷ったりするなよ」

神経を集中させ、男が指差す方に顔を向ける。


………ぼんやりと、その景色が頭の中に浮かび上がった。


人など住めるのかと疑う位ボロの建物。

今にも外れそうな入口らしき扉は、真っ暗な口をぽっかりと開け、風や埃の侵入をすんなりと許している。




「………ウチより酷い」

「………悪かったな」

男は開いた扉の隙間に身体を滑り込ませた。ダリルも嫌々ながら、続いて入った。



中は廃墟と化した民家そのもので、生臭い様な焦げ臭い様な…とにかく酷い臭いが漂っていた。