核を深く刺された影は、その場でずるずると地面に流れ、異臭を放ちながら溶けていく。
………とどめをさしきれていなかったか…?
………しかし、先程も確かに菱形の核を刺した筈だった。
………いったい……。
ジュゥジュゥと溶けていく真っ黒な粘着物を、怪訝な表情で見下ろしていた。
視界の端で…………影の残骸が一瞬…………………。
………ピクリと、動いた。
「――――……!?」
今見ている光景は………夢か……幻なのではないだろうか。
とっくに事切れ、死んだ影の一部が…………ドロドロとした液体のまま……地面を移動していた。
それも……一つだけではない。
霧の海を、真っ黒な残骸がゆっくりと這っていた。
ぬちゃり………ぬちゃりと……気味の悪い音が、あちこちから聞こえて来る。
小さな破片は少しずつ合わさり、その粒は徐々に大きくなっていく。
(―――再生………だとっ………!!)
キーツはゆっくりと後退りした。
蠢く影は、濃い霧の向こうに消えて行く。

