亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


核を深く刺された影は、その場でずるずると地面に流れ、異臭を放ちながら溶けていく。


………とどめをさしきれていなかったか…?

………しかし、先程も確かに菱形の核を刺した筈だった。



………いったい……。




ジュゥジュゥと溶けていく真っ黒な粘着物を、怪訝な表情で見下ろしていた。


















視界の端で…………影の残骸が一瞬…………………。






………ピクリと、動いた。














「――――……!?」


今見ている光景は………夢か……幻なのではないだろうか。













とっくに事切れ、死んだ影の一部が…………ドロドロとした液体のまま……地面を移動していた。




それも……一つだけではない。





霧の海を、真っ黒な残骸がゆっくりと這っていた。

ぬちゃり………ぬちゃりと……気味の悪い音が、あちこちから聞こえて来る。


小さな破片は少しずつ合わさり、その粒は徐々に大きくなっていく。
















(―――再生………だとっ………!!)


キーツはゆっくりと後退りした。

蠢く影は、濃い霧の向こうに消えて行く。