亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


危害を加えないと言われても、信用し難い。

トウェインは首を傾げて何やら考えに耽った。


ようやく額と顎の痛みが引いてきたリスト。
また裏拳を食らわされないように、オーウェンの背後から離れた。

「………オーウェン……捕虜など……本気か?………捕まえても……逃げるに決まって…」

「―――ようするに……」

リストの喚きはトウェインの声に遮られた。

何か思い付いたのか、トウェインはパッと顔を上げた。


「―――私が、“闇溶け”が絶対に出来なければ……信用してくれるのだな」






―――……。



「まあ…簡単に言うとそうだな」

オーウェンはこくこくと頷いた。

武器も持たない、“闇溶け”も出来ない凡人であれば、まだ信じる事が出来る。



「………ならば仕方無いな」


トウェインは溜め息を吐きながら、組んでいた腕を解いた。



………何をする気だ?



リストや周りの兵士、オーウェンでさえも訝しげに見ていた。






―――突如……リストの方に帽子が投げられた。


トウェインが今まで被っていた灰色の丸い帽子だ。

リストは反射的に受け取った。




兵士達が囲む中……トウェインは……………。