亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



「………あのな………すぐに殺りたいのはよぉく分かる。だが、だ。………こういう素敵サプライズを、総団長無しで勝手に進めても良いのか―?……第一、こちらの隊長さんが何故単独で乗り込んで来たのかも聞いて無いんだろ?」

オーウェンはにやにやしながらトウェインに向き直った。


トウェインは無表情で口を開く。


「…………私は………裏切って来たのだ。…………単独でな………」

「裏切った……?」

オーウェンは怪訝な表情を浮かべた。

………あちらの掟では、裏切りは死を意味する。

「嘘を吐け!!僕達をはめる罠に決まってる!!………アレスの使者は何でも汚いからな!!」

「リスト坊や、ちょいうるさい」

喚くリストに、オーウェンは裏拳を放った。
額に食らったリストはその場にうずくまり、無言で痛みに耐えていた。


「…………で………裏切ったあんたは……何しに来たんだ?仮にもここはあんたにとって敵の陣地。………寝返ろうなんて考えていても、俺達はあんたを快く迎えないぜ?」

オーウェンはトウェインの顔を覗き込む。

………鋭い眼光は相変わらずだ。少しも揺るがない。

「………寝返りなど………そんなつもりは無い」