………こんな明るい中で、アレスの使者の人間を見る事はあまり無い。
連中が姿を現わすのはたいてい夜。暗闇を移動手段とするため、陽光の下に出て来ることは無い。
しかし………今ここにその太陽を嫌う奴等が…………しかも独りだけで…武器らしい武器も持たずにいる。
あまりじっくりと見たことの無い灰色の特殊な軍服に加え………何食わぬ顔で歩くその敵は………。
「―――……おい…………女じゃないか……?」
スタスタと歩く細い背中を凝視しながら、一人が呟いた。
「………ああ…………女だぜありゃあ…」
「………アレスの使者に女の兵士がいるとは聞いていたが………」
「…………普通に軍服着てるぜ………」
大半の者が知っている女性というものは、男尊女卑の世の中において身分の低い、目立たぬ存在だ。
使い古されたコルセットと農作業で汚れたスカート。
少し大きな街で見るのは、露出度の高い服を着て外に立つ娼婦や、買われて家畜の世話をしている奴隷。
…………世間では酷く扱われているそんな女が…………軍服を着て、敵陣に独りで来ていて、取り囲まれているこの状況でも平然としている。
なんとも不思議な光景だった。

