亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



………こんな明るい中で、アレスの使者の人間を見る事はあまり無い。

連中が姿を現わすのはたいてい夜。暗闇を移動手段とするため、陽光の下に出て来ることは無い。



しかし………今ここにその太陽を嫌う奴等が…………しかも独りだけで…武器らしい武器も持たずにいる。


あまりじっくりと見たことの無い灰色の特殊な軍服に加え………何食わぬ顔で歩くその敵は………。





「―――……おい…………女じゃないか……?」

スタスタと歩く細い背中を凝視しながら、一人が呟いた。



「………ああ…………女だぜありゃあ…」

「………アレスの使者に女の兵士がいるとは聞いていたが………」

「…………普通に軍服着てるぜ………」


大半の者が知っている女性というものは、男尊女卑の世の中において身分の低い、目立たぬ存在だ。

使い古されたコルセットと農作業で汚れたスカート。
少し大きな街で見るのは、露出度の高い服を着て外に立つ娼婦や、買われて家畜の世話をしている奴隷。


…………世間では酷く扱われているそんな女が…………軍服を着て、敵陣に独りで来ていて、取り囲まれているこの状況でも平然としている。



なんとも不思議な光景だった。