亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~




真っ白な霧で見え隠れするその姿。
前を走る兵士とは違い、堂々とした、軽やかな歩みだ。


「………誰だ?兵士じゃないな…………民間人か?」

「……やけに細いな…黒い服で……………いや………灰色の…………」



……その人影は、霧の中でゆらゆらと揺れている。

まるで、煙の様に。真っ黒な闇を纏わせて。



…………闇を纏わせて…??
















―――瞬間、二人の兵士は青ざめた。





















朝っぱらから、城壁内にけたたましい法螺貝の音が響き渡った。

交替のために外に出ていた多くの兵士が、何事かとややうろたえながらも腰の剣を握る。



…すぐに、詳細な情報が上に報告された。



対応したのはリストだった。

短剣を腰にさしながら、早足で階下に向かう。



「…………騒々しい……早朝からどうした………」

「……はっ。侵入者です。………現在、丘を登って来ているとのこと…」

リストは眉をひそめた。