真っ白な霧で見え隠れするその姿。
前を走る兵士とは違い、堂々とした、軽やかな歩みだ。
「………誰だ?兵士じゃないな…………民間人か?」
「……やけに細いな…黒い服で……………いや………灰色の…………」
……その人影は、霧の中でゆらゆらと揺れている。
まるで、煙の様に。真っ黒な闇を纏わせて。
…………闇を纏わせて…??
―――瞬間、二人の兵士は青ざめた。
朝っぱらから、城壁内にけたたましい法螺貝の音が響き渡った。
交替のために外に出ていた多くの兵士が、何事かとややうろたえながらも腰の剣を握る。
…すぐに、詳細な情報が上に報告された。
対応したのはリストだった。
短剣を腰にさしながら、早足で階下に向かう。
「…………騒々しい……早朝からどうした………」
「……はっ。侵入者です。………現在、丘を登って来ているとのこと…」
リストは眉をひそめた。

