亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

荒野は一面、真っ白な霧の海が広がっていた。

冬も間近なのか、早朝の空気は酷く乾き、冷えきっていた。


一晩中寝ずの番をしていた兵士達は、松明に手を翳しながら白い息を吐く。



「………ようやく朝か。……………昨夜は冷えたな……鎧の良い点は風を防ぐ事だが……冷たいままってのが欠点だな………」

「………鎧の内側に毛皮でも貼り付けるか?………それにしても凄い霧だな………ここから見える景色は幻想的だな……雲の上って感じだ」


早朝はいつも静かだ。
野生の魔獣ライマンやワイオーンなどの獰猛な獣は夜行性だし、アレスの使者も基本的に明るい内は動かないらしい。




こんな時だけ………平和だと感じる。

束の間の静けさ。













辺りは次第に明るくなり、そろそろ松明も必要無くなってきた。

「………日が出て来たな。今日の訓練はオーウェン様が全指導だったか?」

「ああ。でもまあ……指導を受ける前に、まずオーウェン様を起こすことで午前中は終わりそうだな」

「……………オーウェン様は結構……寒がりだからな………毛布から出てきやしねぇ」