亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~









「―――……今朝はまた一段と暑い。……………なのに何故……こうもガチガチと歯が鳴るのか…。身体が震えるのか。………爪も白い……皮膚が乾いておるわ………」


「………それはきっと、愚かな民が起こす厄介事を、貴方様が丹念に片付けてきた故の心労に御座いましょう」

「……………そうか…………この動悸も……早まる老いも………全ては愚民共のせい……………わしはなんと……民に恵まれていないのか……」

「……………おっしゃるとおりです。…………御報告致します。反逆を企む者がいると思われる村をつき止めました。拷問にかけて吐かせる方針ですが……いかがいたしましょうか」

「…井戸に毒を放て。…いや……村中に赤子の血をまいて野生のバジリスクに襲わせよ。馬鹿共にはそれ位の制裁を下せ。……手緩いか?」


















響き渡る高らかな笑い声を聞きながら、まだ10になったばかりの少年は薄ら笑みを浮かべる。炎よりも濃い、血の様な色の髪が灼熱の大陽の下で揺れる。

「………あれはもう病気だな。……大臣は皆揃って、父上を飢えた犬だと言っている。………あながち間違っていないな?もっと正確に言えば………共食いに飢えた家畜だ」