亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

隊を裏切った。

隊長に裏切られた。

捨てられた。

置いていかれた。






…………そんな事で怒っているのではない。





他の奴等には分からない。






…………第4部隊隊員の、隊長へのまなざしは、上司に対する敬意だとか……部下としての忠誠心だとか……義務感だとか……。


そんな表上の格式張ったものではない。


それをもっと越えたもの。

信頼というものをもっと越えた……………………他人には理解出来ない絆がそこにはあるのだ。



「……………トウェイン隊長は仕方無く脱走を決意した。……………………そんなの………あんたに言われなくても分かってる。イブもマリアも…僕もね。……………馬鹿にしないでほしいね」

「………………そうか………悪い…」


…すっとダリルはジスカに背を向けた。……背後からジスカの溜め息が聞こえた。









…………隊長に何があったのか。

いずれ分かる事だろうが…。


帽子を深く被り直し、何も無い暗がりを睨んだ。


―――隊長…気にしなくても僕らは誰もあんたを恨んじゃいないよ。

………ただ…これだけは言わせて貰う。


















「―――嘘つき」