「―――っ………おい!イブ!!」
自分よりも遥かに小さく華奢な後ろ姿は、到底追いつけない速さで、暗い廊下の窓から外へ走り去って行った。
ただ見送る事しか出来ないでいたジスカの前には、取り乱す事無く平然と歩いて行くダリルの姿が。
ジスカはダリルに追いつき、正面に回った。
光りも無く、焦点の定まっていない半開きの目がジスカを見上げる。
…………少年は実に不愉快そうな、怪訝な表情を浮かべていた。
「…………何?」
「………………トウェインの脱走の事………誤解するなよ…………………あいつは…」
「どいて…」
ジスカを押しやり、ダリルは再度歩き始めた。
「……………分かってくれ………!………………あいつは……こうするしかないって…」
ダリルはふと足を止め、ジスカを一瞥した。
………被った帽子から覗く妙に鋭い眼光は、13歳とは思えない。
「…………あんたこそ、どんな目で僕らを見てるのさ…………誤解だって?」
ダリルは鼻で笑い、やれやれと溜め息を吐いた。
「…………隊長が裏切った。………そんな事で僕もイブも腹を立てている訳じゃない。…………………あんたには分からないよ。…………第4部隊の内情がね」

