亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~





堪え切れない様に絞り出した、痛烈な叫び。



狭い一室に響き渡り、余韻は外の雨音に包まれた。





弾かれた様に立ち上がったジスカは、伸ばされた彼女の手首をいつの間にか掴んでいた。

………指の間に隙間が出来る程、その黒い革手袋に包まれた腕は細かった。



「…………ジスカ……?」

それはあまりにも突然で、何故こんな事を、という疑問よりも、まず何が起きたのかという事で、頭は混乱していた。


薄暗い中、唯一の蝋燭の明かりはジスカの背を照らしていた。

逆光で、彼の表情は愚か、姿形さえ曖昧な黒い影と化していた。














………だから、彼の顔が目と鼻の先にまで近付いていることに、トウェインは気付かなかった。














不意にグッと、痛い程強く掴まれていた腕を引かれた。

軽いトウェインの身体はすぐに前へ傾いた。



「……!?……………ジス…」























親しい友の名は、最後まで言えなかった。


















言葉という言葉は全て、この時だけ、ジスカの唇に塞がれた。