亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

トウェインはぎゅっと目を瞑った。

………下らない。こんな時に何を考えているのだ。
………まるで子供だ。

トウェインは“闇溶け”の状態のまま、滑らかな崖の斜面を漂った。

城壁の上を何匹ものワイオーンが歩き回っている。
まだ気付かれていない。

(………背後からの侵入…襲撃は困難か………………やはり正面から…………………………………………)






これは………夢の続きか?







トウェインは何度も瞬きを繰り返した。

しかし瞳に映るそれは消えることもなく……静かに微笑みかけてきた。






所々亀裂が入った城壁の隙間。そこから見える城壁内の石畳。













―――彼女がいた。










赤いドレスの、少女が。











―――…ローアンが。













ワイオーンやら兵士が見張る通路のど真ん中を、ローアンは軽快なステップで進んで行く。


………城の明りに照らされたその姿は透けている様に見えた。



………誰も気がつかない。………………幻?私にしか見えない…ただの幻だろうか?



小さな姿を目で追いながら、トウェインはその場から動けずにいた。