亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~





「―――……城の背後の偵察ねぇ……崖になってるし…手薄だとは思うけどよ………偵察だけかぁ………ちょいと暴れたいところなんだがなぁ」

「何処かの馬鹿が療養中だから仕方無いだろう」

「………………それは悪う御座いました………」


日が暮れるのと同時に、トウェインとジスカは予定通り城へ向かった。

城の背後は険しい崖になっている。
全く崩れる気配の無い、固い自然の城壁と言ってもいい。
おまけに磨きあげられた大理石の様に表面が滑らかであるため、急斜面の崖を上り下りするどころか、立つこともままならない。


この困難な崖から侵入しようとする者はまずいないのだ。


この場所の偵察はかなり慎重に行かねばならない。
何があっても“闇溶け”を解かないことが重要だ。

「………うわ―…ツルツル………“闇溶け”が解けた時点で敵さんの陣地に滑り落ちるな………よく見ると下…針地獄になってるぜ…」

侵入者撃退用で、ちょうど真下に数十本の木の杭が立てられていた。

………落ちたら串刺し…。溜め息を吐きながらジスカはメモした。

「…ジスカ……無理するなよ。二手に分かれよう」