小さなイブの手の平から…………約20センチの赤い蜘蛛がわらわらとわき出した。
ズブズブと、皮膚からどんどん出て来る蜘蛛は、イブの足下に下り立ち、カサカサと動く。
「―――可愛いでしょ―?これはフェーラが狩りをする時に時々出すものなの。身体の一部から作ってるから、分身みたいなものかな?これに噛まれると、小一時間くらいで全身麻痺に襲われるのです!んで糸でぐるんぐるんにして、ご主人のあたしの元に運んできてくれる優れ物なのだ!…魔力消費するからあんまし使わないけどね―」
…何十匹もの赤い蜘蛛が、兵士達にじりじりと近付いて行く。
「…………ちなみに、全身麻痺を起こすと死んじゃうから。………誰か一人でもあたしを捕まえたら……毒を除いてあげる~」
兵士達は恐怖に顔を引きつらせた。
………これくらいはやんなきゃね。
可哀相だけれども…少し酷かもしれないけれど………仕方無い。
(…………敵さんの方にも……フェーラ…いるしね)
………フェーラの能力を完全に引き出されれば…イブとて容易に倒せないだろう。
ならば今の内に、フェーラに慣れさせておかねばならない。
訓練で死人が出るのは、許されている。

