亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


小さなイブの手の平から…………約20センチの赤い蜘蛛がわらわらとわき出した。
ズブズブと、皮膚からどんどん出て来る蜘蛛は、イブの足下に下り立ち、カサカサと動く。

「―――可愛いでしょ―?これはフェーラが狩りをする時に時々出すものなの。身体の一部から作ってるから、分身みたいなものかな?これに噛まれると、小一時間くらいで全身麻痺に襲われるのです!んで糸でぐるんぐるんにして、ご主人のあたしの元に運んできてくれる優れ物なのだ!…魔力消費するからあんまし使わないけどね―」



…何十匹もの赤い蜘蛛が、兵士達にじりじりと近付いて行く。


「…………ちなみに、全身麻痺を起こすと死んじゃうから。………誰か一人でもあたしを捕まえたら……毒を除いてあげる~」



兵士達は恐怖に顔を引きつらせた。







………これくらいはやんなきゃね。

可哀相だけれども…少し酷かもしれないけれど………仕方無い。



(…………敵さんの方にも……フェーラ…いるしね)


………フェーラの能力を完全に引き出されれば…イブとて容易に倒せないだろう。

ならば今の内に、フェーラに慣れさせておかねばならない。



訓練で死人が出るのは、許されている。