亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


人間の跳躍力など比にならない。

約10メートル上の塔の壁に、爪を立ててしがみついた。そのまま、妙な鼻歌を口ずさみながら屋根へどんどん上がって行く。


…………。



どうすれば良いのか分からず、兵士達は見上げたまま、固まっていた。

低い塔の屋根に上りきったイブは、真下の兵士達に向かって茶化し出す。

「ここまでお出で~若者よ~。若いだけが取り柄のヘタレよ~」


……………。



約半数がピクリと動いた。



「―――ハァーゲハゲハゲハゲ予備軍~。見る見るうちに、ハラハラと~」


…………半数が顔をしかめた。



「―――あっちもこっちも甲斐性無し~。ふけ顔ふけ顔モテなさそ~」



………半数…以上が無言で武器を取り出した。



「単純淡泊単細胞~。ジスカと同じ、スッカスカ~」

「―――なっん…だとぉぉ!!!」


ちょっと様子を見に来た、バッドタイミングのジスカが叫んだ。

「スカスカ言うな!!何度も言っただろうが!!人の名前でからかうのは良くない!!そういうのがいじめに繋が…るううううぅぅ!!??」

トウェインの華麗なる回し蹴りが、ジスカの腹部にきれいに入った。
ジスカは砂埃を巻き上げて吹き飛んだ。