亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


ざわっ…。

兵士達は皆目の前の光景に息を呑み、目を丸くした。

ほんの数秒前まで、ベルトークの隣りには11歳の少女がいた筈だった。


しかし今そこにいるのは……………。


…………縦長い耳に、鋭い爪を添えた手足の指先、真っ赤に燃える大きな瞳に、目を引く額の第3の目。


……………フェーラだった。

寿命は約150年。身体の造りは人間に良く似ているが、知能数は低い。並外れた身体能力を持ち、特殊な魔術も使える、極めて獰猛な野獣。

………それが今…。




「いやーん!そんなに見・な・い・で―。この素の姿はちょっと恥ずかしいから―。にゃはははは~!!」


…………普通に喋って…やはりくねくねしている。

「この通り、イブちゃんは可愛い可愛い激可愛いフェーラなのです!……あ、尻尾もあるけど、脱ぐわけにもいかないし?穴が無いから出せないの。ごめんね―?…………いよっしゃあ!じゃあ鬼ごっこと行きますかぁ!」

困惑する兵士達など気にも止めず、イブはその場で地に手を付いた。

直立歩行から、四足歩行の姿勢に移る。

「―――訓練開始~~!トウッ!!!」

イブはそのまま真上に飛び上がった。