亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

以前よりも偵察の数を増やし、敵の戦力を再度確認する。

敵がどんな罠を仕掛けて来るか分からない。先日の襲撃は最初から作戦丸潰れだった。

二度もへまはしていられない。

常時、城の周りを警戒せねばならない。





「………戦線布告は二週間前に行う。使者は私だ。…………………それまでの軍力強化は、主にゴーガンとジスカ。偵察は私とトウェイン」

それを聞いたゴーガンは、驚いて顔を上げた。


「…………偵察に……トウェインが…だと?」

トウェイン自身も、自分の名前が上がったことにやや驚いていた。
今まであまり外に出してもらえなかったのだ。それまで、トウェインの仕事は主に軍力強化に定着していた。


………総隊長が言っていた任務とはこのことだったのだろう。


込み上げて来る嬉しさがなんとも心地よかったが…………今この場は素直に喜べる空気ではない。


ベルトークを忌々しく睨み付けているゴーガンの、憎悪にも似た重い空気が充満していた。

………トウェインは黙っていた。

ジスカも居心地が悪いのか、頬杖を付いて手元の資料を摘んだり捲ったりを繰り返していた。




…………ベルトークは口を閉ざしたまま、ゴーガンをじっと見据える。