亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


「……………知りません。………私は…………名も無い小さな村で産まれた人間……………王族など…………何の接点もありません」

会う機会などある筈がない。
自分は貴族でも無い。ただの農民の子供。



………私を覚えていないか……だと?


………………訳が分からない。






「…………………聞きたいことはそれだけだ。…………………三年振りの………お前との会話………………実に楽しいものだった……」



澄み切った、虚ろな青い瞳が、純白の髪の間から覗いた。



………ゾッとした。










「―――――………お前に近々任務を与える。………………詳細はリンクスの口から聞け………………………………………下がれ」


低い、無感情の声。




トウェインは深く、頭を下げた。

これ以上無いと言うくらい、尊敬の意を込めて。






「―――はっ」









待ち遠しかった、尊敬する人との交わした会話。


それはとても短く、実に淡泊で何の意味も無かったが………。





トウェインの胸は喜びで高鳴っていた。