亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~





相変わらずトウェインに背を向ける総隊長。
背中に垂れ下がった長い髪は、闇の中でも白く映えていた。



「―――………………あの城に行って………何か得たものはあったのか…………?」

「……得たもの」

………どういう意味だろうか。戦争をしに行き、敵を討つことが出来ずに帰って来てしまったというのに………そこから得るものなど……。



「………何も……」

「………………そうか…………得たものは、何も無い。………代わりに………………不可解な疑問を持ち帰ったわけか……………………………………『ローアン』が気になるか………?」

「………」






図星だ。どうしてこう………この方は心中の的を必ず射るのか。

………見透かされている。











「…………………ローアン姫は………………そうだな……生きていればお前と同じ歳だ。……………トウェインよ……………姫のことで…………何か思い当たることは無いか………?」


…姫のことで……思い当たること。





…………たまに見る、あの奇妙な夢が脳裏を掠めた。

……幼いローアンという少女が、自分の前に立って見上げて来る。

仕切りに彼女は言うのだ。


―――私を覚えていないの………と。