相変わらずトウェインに背を向ける総隊長。
背中に垂れ下がった長い髪は、闇の中でも白く映えていた。
「―――………………あの城に行って………何か得たものはあったのか…………?」
「……得たもの」
………どういう意味だろうか。戦争をしに行き、敵を討つことが出来ずに帰って来てしまったというのに………そこから得るものなど……。
「………何も……」
「………………そうか…………得たものは、何も無い。………代わりに………………不可解な疑問を持ち帰ったわけか……………………………………『ローアン』が気になるか………?」
「………」
図星だ。どうしてこう………この方は心中の的を必ず射るのか。
………見透かされている。
「…………………ローアン姫は………………そうだな……生きていればお前と同じ歳だ。……………トウェインよ……………姫のことで…………何か思い当たることは無いか………?」
…姫のことで……思い当たること。
…………たまに見る、あの奇妙な夢が脳裏を掠めた。
……幼いローアンという少女が、自分の前に立って見上げて来る。
仕切りに彼女は言うのだ。
―――私を覚えていないの………と。

