「………良い…………………まだまだ楽しみ甲斐があるというものだ。…………………妙なこともあったらしいがな」
総隊長は少し笑いながら言った。……………ジスカめ………ベルトーク隊長あたりに報告したな。………………後で土葬してやる。
「……………私にも………よく分かりません。理解しがたいことで…………」
「……………亡き姫君と間違われるとは………………………お前も大変だな………………あの若者は……姫君を本当に慕っていたからな……………」
「………………」
「……………………何を悩んでいる」
顔など見てもいないのに、トウェインの揺れる心中を総隊長は見抜いた。
トウェインはビクリと身体を震わせた。
「………いえ………」
「………………トウェイン」
ガタ……。
僅かに椅子が揺れる音が聞こえたかと思うと、それまで姿など何一つ無かったトウェインの視界に、すらりとした細身の人影が浮かび上がった。
ゆっくりと立ち上がった総隊長の背中は、酷く懐かしく思えた。
………以前より髪が伸びている。
………少しだけ、痩せている気がする。
純白の月光のごとき髪がふわりと揺れた。

