亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


「………良い…………………まだまだ楽しみ甲斐があるというものだ。…………………妙なこともあったらしいがな」

総隊長は少し笑いながら言った。……………ジスカめ………ベルトーク隊長あたりに報告したな。………………後で土葬してやる。

「……………私にも………よく分かりません。理解しがたいことで…………」

「……………亡き姫君と間違われるとは………………………お前も大変だな………………あの若者は……姫君を本当に慕っていたからな……………」

「………………」









「……………………何を悩んでいる」


顔など見てもいないのに、トウェインの揺れる心中を総隊長は見抜いた。

トウェインはビクリと身体を震わせた。


「………いえ………」

「………………トウェイン」






ガタ……。


僅かに椅子が揺れる音が聞こえたかと思うと、それまで姿など何一つ無かったトウェインの視界に、すらりとした細身の人影が浮かび上がった。

ゆっくりと立ち上がった総隊長の背中は、酷く懐かしく思えた。


………以前より髪が伸びている。

………少しだけ、痩せている気がする。





純白の月光のごとき髪がふわりと揺れた。