亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



………無口で、淡泊で、近寄り難く、誰からも恐れられている男の………告白だった。


しかもそれは、マリアに対する狂おしいばかりの……今までずっと秘められてきた告白だ。


マリアは恋という感情を知らない。
恋をする前に男に酷い仕打ちをされ、強姦され、子供を産んだ。

……愛情を与えることはあっても、受けたことは無かった。



しかし今、マリアは初めて他人から、何処か違う愛情を受けた。

………恋という形で。

「…………っ……」




心臓が高鳴る。



マリアの顔は更に赤くなった。自分でもどうしてこんなに動揺しているのか分からない。

…急にベルトークの顔を見れなくなった。

………何故だろう。

恥ずかしくて仕方無い。






ベルトークの方も、その間口を閉ざしていた。
しかし、視線をマリアから背けようとしない。








「………貴女は……人だ。…………化け物などではない………………私は………………!」


その途端、ベルトークはマリアの細い首に唇を落とした。

ざらりとした舌が首筋を舐め上げた。




「―――はっ………や……」

びくんとマリアの身体が震えた。

心地よい痺れが全身に行き渡る。