目尻に涙を溜め、小刻みに息をするマリアの姿は、もはや兵士ではない。
恥じらう一人の女だった。
ベルトークはそんなマリアの表情をじっと見詰めた。
涙で視界が揺れる。
目の前のベルトークの顔がぼんやりと見えた。
………男性とは思えない程綺麗な顔だ。
長い、ウェーブのかかった金髪が、マリアの頬にさらりと落ちた。
………彼の深いエメラルドの瞳は、何かを訴える様な、寂しさを感じた。
「………私を………恨めばいい。………恨め…なのに貴女は………。…………私は……………気がつかない内に………貴女を見る度に………私は………」
マリアは放心状態だった。
………今耳に入って来る言葉は、本当にあのベルトークが言っているのだろうか。
これは………夢ではないのだろうか。
ベルトークは悲しげな表情で、マリアの目を見据えて呟いた。
手首を掴んでいた手がふっと離れ、マリアの頬を撫でた。
「――――マリア=クローデル………私は………………貴女が、好きだ」

