亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


目尻に涙を溜め、小刻みに息をするマリアの姿は、もはや兵士ではない。

恥じらう一人の女だった。

ベルトークはそんなマリアの表情をじっと見詰めた。


涙で視界が揺れる。

目の前のベルトークの顔がぼんやりと見えた。
………男性とは思えない程綺麗な顔だ。
長い、ウェーブのかかった金髪が、マリアの頬にさらりと落ちた。

………彼の深いエメラルドの瞳は、何かを訴える様な、寂しさを感じた。



「………私を………恨めばいい。………恨め…なのに貴女は………。…………私は……………気がつかない内に………貴女を見る度に………私は………」







マリアは放心状態だった。

………今耳に入って来る言葉は、本当にあのベルトークが言っているのだろうか。

これは………夢ではないのだろうか。






ベルトークは悲しげな表情で、マリアの目を見据えて呟いた。








手首を掴んでいた手がふっと離れ、マリアの頬を撫でた。























「――――マリア=クローデル………私は………………貴女が、好きだ」