亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

低い、くぐもった声。

………苛立った声を、ベルトークは漏らした。






「………何故笑うのだ。…………………感謝?………貴女は……化け物にした私を恨んでも良い。………何故笑うのだ……」

「………」

ベルトークの声は震えていた。
常に無感情な彼とは思えない。





「―――貴女はどこまで………優し過ぎるのだ…」









それまでずっと佇んでいたベルトークが、動いた。
マリアとの距離を徐々に縮めていく。












……この威圧感は……何なのだろう。






………マリアは金縛りにでもあったかの様に立ち尽くしたまま動けなかった。








正面にまで歩んで来たベルトークを見上げる。

頭一つ分以上高いこの男を凝視する。


「―――隊…」



















言い終える前に、マリアは大きな腕で抱きすくめられた。















………頭が真っ白になった。











まただ。


また………昼間の時同様…。















ただ驚いて目を丸くするばかりのマリアを抱き締める腕に、徐々に力が入る。


彼の体温が、服を通してじんわりと伝わってきた。