亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

ベルトークはそう呟き、この時初めてマリアの目を見てきた。

冷たく、ゾッとする様な鋭いまなざしだった。しかし、そんな背筋が凍る視線も、温厚なマリアにとっては何でもない。

「………癖…なんです。………もうずっと……笑っています………私は…」













再び、沈黙が過ぎった。
風の音さえしない、静かな夜。











「―――私はもう………人から外れてしまっているのでしょうか」





不意にマリアは口を開いた。













「………どんな形でも……生きたいと思ったのに……」

右足をそっと擦った。

「………それでも……何処かで私は人でありたいと思っている………」


ベルトークの突き刺す様な視線を感じながら、マリアは続けた。


「………周りから……化け物だとか……言われるのは………慣れています。……慣れているのに…でも…………やっぱり…」








悲しい。











悲しいの。









「………でも…隊長には感謝しています。…………本当に」

どんな形でも、生きている。
感謝している。




マリアは笑いながら言った。









「―――だから…」