亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


右足の蔓や枝が月光を求める様に伸びた。











………一時間程経っただろうか。

細い枝はシュルシュルと音を立てて、再度他の枝に絡み付いて落ち着いた。



疼きも無くなった。










(………そろそろ…部屋に帰ろう…)

………腰を上げようとした時だった。











「―――こうやって対処していたのか」







突然、その声で静寂は破られた。
マリアはゆっくりと部屋の入口付近に視線を移した。


青白い月明りを浴びて立っていたのは……………ベルトークだった。




「………隊長」








脳裏に、昼間の出来事が浮かんだ。



………マリアは目を逸らした。




「………何故月に一度…ここに来ているのかと思えば………そういうことか」

「………知って…らしたのですね」












二人は微妙な距離をとったまま、満月を見ながらぽつりぽつりと話していた。


「………その足になって……もう6年か」

「ええ……それくらいになります」

マリアは微笑んだ。
柔らかい、暖かな笑顔が月下に浮かんだ。















「………貴女は……よく笑う」