亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



………目に映るそれは……現実でしかなかった。





……そこにあるのは右足。

しかし、膝から下は、人の足ではなかった。





枝。






蔓や枝が絡み付いて出来た、獣足の形をした足。


枝と枝の隙間から小さな葉が見え隠れしている。



それは陽光の下で、静かに蠢いていた。



……スカートを太股まで捲って見ると、白い肌にうっすらと、明らかに血管とは違う赤い管が透けて見えた。



………血管と神経が、完全に繋がっている。

………身体に、枝が浸食していた。

枝に触れると、ざらざらとした感触が伝わってきた。










マリアは唖然としていた。












「………我が隊のベルトーク隊長がなされた。………嫌なら良い。ただ………その寄生植物があるから、お前は今生きている。………取り除けば、死ぬことになる…………………生きるも死ぬもお前の勝手だ。だが、忘れるな…」

少女は真っ直ぐマリアを見据えて言った。









「生きたいのならば、それなりの覚悟が必要だ。………どんな形でも……生きている。生きる事に、形など関係ない」









………この娘は…。





「……ええ」






マリアは柔らかな笑みを浮かべた。