亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



男が正面で屈み、何やらマリアに囁いた。





―――どんな形でもか。






そう聞こえた。





マリアは、ただ微笑んだ。
途切れ途切れに笑い声さえ漏れた。


「………………良いの…………復讐するなら……別に人じゃなくても…………良いの………………………良いの……」




























その後はよく覚えていない。





男が何やら、丸くて赤い物をマリアの右足に当ててきた所で意識は途切れている。





何も感じない筈の深い眠りの中で、キリキリと小さな痛みが纏わりついていた。

無くなった右足が、ギシギシと奇妙な音を立てて動く。



………身体が酷くだるい。
全身の血という血が、全て吸われている様な感覚だった。

私の血肉を、少しずつ、少しずつ、吸収している。














まるで…。















成長しているみたいに。


















ナセルがすくすくと育っているみたいに。
































―――明るい陽光が、マリアの顔を照らした。







………眩しい。