「………はい」
「………なら躊躇するな。私はあちらに戻るからな」
「……分かりました」
マリアは影の残骸に手を伸ばした。
ベッタリと、気持ちの悪い黒い液体が付着した。
………それを、何度も何度も握り潰した。
「……………これって………どうやったら……殺せるの?」
マリアは微笑みながら呟いた。
男と少女の視線が、ふとマリアに向いた。
「………私のナセルを………返してよ…………………返して………返して………」
真っ赤な影の目玉がブチッと手の中で潰れた。
「………殺させて………お願い………………殺させてよ………殺さ……せて…………」
虚ろな瞳に、蝋燭の様な冷たい灯火があった。
マリアは傍らに佇む少女に、笑いかけた。
「………私を………まだ殺さないで……………まだ……死ねないの…………まだね………どんな形でも………。………………憎くて……………仕方無いの………」
少女は無言だった。握り締めていた剣を消し、男に再度向き直る。
「………隊長…」
「……………………貴女は下がっていなさい」

