視線の先に、朽ちた影の残骸が広がっている。
跡形も無くなった、我が子。
服の切れ端や血痕だけが、ナセルが今までそこにいたことを物語っていた。
「―――………朧月夜……に………かかる………橋……」
掠れたか細い声で、マリアは歌っていた。
………自分は泣いているのに………どうして…………。
………どうして、笑っているのだろう。
「…………絶えた……道……………は………」
そう。
笑っている方が
楽なんだ。
私は………弱いから。
「………」
足音が聞こえてきた。
涙で歪んだ世界に、背丈の違う二人の人間の影が落ちた。
「………無理だな。………血を流し過ぎている。あと数分というところか…」
低い男の声が聞こえた。マリアにはもう、言葉の意味さえ分からない。
「……ベルトーク隊長……術は無いのですか…?」
「………どうしろと?………早く逝かせた方がこの娘のためだ。お前の手で葬ってやれ。…もう人を殺せるだろう?」
跡形も無くなった、我が子。
服の切れ端や血痕だけが、ナセルが今までそこにいたことを物語っていた。
「―――………朧月夜……に………かかる………橋……」
掠れたか細い声で、マリアは歌っていた。
………自分は泣いているのに………どうして…………。
………どうして、笑っているのだろう。
「…………絶えた……道……………は………」
そう。
笑っている方が
楽なんだ。
私は………弱いから。
「………」
足音が聞こえてきた。
涙で歪んだ世界に、背丈の違う二人の人間の影が落ちた。
「………無理だな。………血を流し過ぎている。あと数分というところか…」
低い男の声が聞こえた。マリアにはもう、言葉の意味さえ分からない。
「……ベルトーク隊長……術は無いのですか…?」
「………どうしろと?………早く逝かせた方がこの娘のためだ。お前の手で葬ってやれ。…もう人を殺せるだろう?」

