亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

見掛けたことはあったが、こうやって面と向かって会話するのも、睨まれるのも初めてだ。
まさか戦いの場で相見えるとは…。



「………私が引きつけている間に、早く逃げろ。第3部隊は撤退命令が下されている」

「……で、ですが…トウェイン隊長殿を一人にしておく訳にはいか…」

言い終える前に、その顔に影の体液が降り懸かった。

目にも止まらぬ早さでこの少女は影を八つ裂きにした。
今は余裕があるのか、剣を構えようともせず、肩に抱えている。


輝く金髪から覗く青い瞳が、横目でぎろりと、こちらを捕らえた。

―――………恐っ!!


「―――私を何だと思っている……お前達は不快に思っている様だが………私は仮にも兵士だ。………戦力として見てもらいたいものだな……」

また影が、口を開けて突っ込んで来たが、少女はそれを見ずに見事急所を突いた。

「………分かったら、さっさと、行け。………今なら不慣れな“闇溶け”も出来るだろう?………ほら!行け!!!」

二人は半ば震えながら「はいっ!!!!」と答えた。

「敬礼だ!!敬礼をせんか馬鹿者どもめ!!全く!………ジスカはどういう教え方をしているのだ…!」