言葉に出来ない程の、激痛。
右足だけが、熱く、重く、狂った様に痛い。
痛みとは……これほどのものか。
神経自体を取ってしまいたい。
奥歯を噛み締め、右足にそっと触れた。
………膝から下が無かった。
驚く程滑らかな切断面から、真っ赤な血が迸っていた。
砕けた骨と、筋の入った柔らかな肉が覗いている。
すぐ傍らに、皮膚だけが繋がった膝から下の足が転がっていた。
血は止まらない。
………全身が痺れ、重くなってきた。
自分の身体ではないような違和感。
指先が小刻みに震え、思う様に動かない。
「………あああ……っ……うぁ………はっ…………ナ、セル……」
動かない下半身を引き摺って、ナセルの元へと向かう。
………揺らぐ視線の先に、無言で泣き続ける我が子。
ゆっくりと忍び寄る真っ黒な影が、真っ赤な口を開いた。
鋭く、汚れた牙が何重にも並んだ巨大な口。
ナセルがマリアに気がついた。
散々泣いて腫れてしまった目を見開いて、意味も無く、いつもの様に。
眩しい笑顔を浮かべた。
―――ナセルが、消えた。

