「ナセル……!…………………!?」
うまく歩けない我が子の背後の木から、大きな黒い影がベチャッ…と音を立てて落ちてきた。
にゅるりとむき出しになった赤い一つ目が、座り込んで泣いているナセルを捉えた。
―――やめて。
――――やめてよ!!
「………嫌!!…ナセルに近寄らないで…!」
再度火のついた枝を拾った。
その瞬間、真後ろに佇んでいた小さな家が、燃え盛って浸食する火に耐え切れず、ぐらりと傾いた。
マリアは寸前の所で避け、草むらに転がった。
崩れ落ちる家屋から、ガラスや柱、家具が散乱した。
マリアの瞳に、クルクルと弧を描いてこちらに飛んで来る、鈍く光るものが映った。
それはマリア目掛けて真っ直ぐ向かって来た。
―――斧だった。
咄嗟に身体を捻った。
………しかし、もう遅かった。
錆だらけの斧の刃は吸い込まれる様にマリアに向かい……。
………真っ白な、華奢な右足に、落ちた。
「―――っあああああああああ…!!」
うまく歩けない我が子の背後の木から、大きな黒い影がベチャッ…と音を立てて落ちてきた。
にゅるりとむき出しになった赤い一つ目が、座り込んで泣いているナセルを捉えた。
―――やめて。
――――やめてよ!!
「………嫌!!…ナセルに近寄らないで…!」
再度火のついた枝を拾った。
その瞬間、真後ろに佇んでいた小さな家が、燃え盛って浸食する火に耐え切れず、ぐらりと傾いた。
マリアは寸前の所で避け、草むらに転がった。
崩れ落ちる家屋から、ガラスや柱、家具が散乱した。
マリアの瞳に、クルクルと弧を描いてこちらに飛んで来る、鈍く光るものが映った。
それはマリア目掛けて真っ直ぐ向かって来た。
―――斧だった。
咄嗟に身体を捻った。
………しかし、もう遅かった。
錆だらけの斧の刃は吸い込まれる様にマリアに向かい……。
………真っ白な、華奢な右足に、落ちた。
「―――っあああああああああ…!!」

