足下に転がる死体が、扉の開閉を邪魔していた。
………血溜まりの中央で浮かぶそれは、腰から下が無い。
あっという間に絶命したらしいのか、目はかっと見開かれ、口は大きく開いていた。
………父だった。
…逃げそびれたのか。
「………ナセル…!」
たくさんの屍を避けながら、血と火の海を走った。
影に見つからぬ様、家の裏手に回り、そっと辺りを窺った。
………思わず、悲鳴をあげそうだった。
家の裏口に、母とミラの姿があった。
………ずるずると、バラバラになった身体を影に飲み込まれていた。
マリアは倒れている木から枝を折り、燃えている家屋の火をつけ、影に向かって振り回した。
「――やめて!!………このっ……!!………母さんとミラを返して!!」
影は火を恐れたのか、眩しそうに菱形の目を瞑り、ずるずると草むらに這っていった。
マリアは火の付いた枝を放り投げ、息を切らして汗を拭った。
ふと、草むらの手前に視線を移す。
煙と異臭が立ち込める薄暗い景色の隅に、小さなシルエットがあった。
声を出さずに泣いている。手足や顔は煤だらけだ。
返り血を浴び、全身真っ赤だった。
………血溜まりの中央で浮かぶそれは、腰から下が無い。
あっという間に絶命したらしいのか、目はかっと見開かれ、口は大きく開いていた。
………父だった。
…逃げそびれたのか。
「………ナセル…!」
たくさんの屍を避けながら、血と火の海を走った。
影に見つからぬ様、家の裏手に回り、そっと辺りを窺った。
………思わず、悲鳴をあげそうだった。
家の裏口に、母とミラの姿があった。
………ずるずると、バラバラになった身体を影に飲み込まれていた。
マリアは倒れている木から枝を折り、燃えている家屋の火をつけ、影に向かって振り回した。
「――やめて!!………このっ……!!………母さんとミラを返して!!」
影は火を恐れたのか、眩しそうに菱形の目を瞑り、ずるずると草むらに這っていった。
マリアは火の付いた枝を放り投げ、息を切らして汗を拭った。
ふと、草むらの手前に視線を移す。
煙と異臭が立ち込める薄暗い景色の隅に、小さなシルエットがあった。
声を出さずに泣いている。手足や顔は煤だらけだ。
返り血を浴び、全身真っ赤だった。

