亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


すっかり他人同然となってしまった家族のいる家。

父はもう口もきいてくれない。
母もミラもよそよそしい。
カザレは一年前に花嫁を迎えたが、激しい暴行の末、嫁を殺してしまった。

今は少し離れた村に住んでいる。




ナセルをつれて散歩から帰って来ると、父と仕事仲間の男が二人で何やら話していた。

その横をさっと通り過ぎた。



「なんでも、三日前からこの辺りの村が次々と襲われているらしい。焚き火をしていてもだ。“影”どもは群れで来たらしいぞ…」

「………らしいな。……谷の方の村はほとんど全滅したとか。………どうなっちまってるんだ…」

「………半年前の…あの反逆からさ。あれから急に影が凶暴化しやがった…。王族の虐殺後に新しく組織された国家騎士団と、反逆を企てた革命派の奴等が、揃って影の討伐をしているらしい」

「………革命派なら分かる。だが………そもそもの元凶である国側が………まるで好感度を持たせようとしているみたいで気に食わねぇな……」

「……皆賛否両論さ。国側と革命派側………受け取り方は人それぞれさ」






………近頃焚き火の番が増えたのはそのせいか。

村が襲われているというのは本当なのだろうか。