亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~







陽光に照らされ、茶色がかった金髪がきらきらと輝く。

眩しい笑顔は、まるで太陽の様だった。




マリアに似た、可愛らしい男の子だった。



この年で2歳になる。

「―――ナセル、おいで」

目線の高さでしゃがんで、マリアは我が子を呼んだ。

ナセルはよたよたとおぼつかない足取りで歩んできた。





ナセルは2歳であるというのに、うまく立って歩けない。
おまけに声が出なかった。

ナセルは未熟児だった。
体重も軽く、身体は小さかった。なんとか命は取り留めたが、身体に障害が残ってしまった。

普通の子供より成長が遅く、物覚えが悪かった。

他人は哀れに思ったり、産まない方が良かったのだのと言ってきたが、マリアは聞く耳を持たなかった。









自分の血や肉を分け、産まれてきてくれた我が子。

どんな形でも、どんなものでも、私の子だ。
私から生まれた、もう一人の私自身だ。

愛しくない筈が無い。




「……ナセル…今度またお花畑に行こうか?………ナセル…お花好きよね?」

言っている意味が分かっているのかは不明だが、ナセルは満面の笑みで答えてくれた。

柔らかい小さな手がマリアの顔に触れる。