亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

背後にいる仲間も必死で応戦していた。

互いを気に掛ける余地は無い。

ただ夢中で剣を振り続けた。



何とかして退路を見つけなければ。

切り倒しながら、二人はひたすら考えていた。
木に上る手もあるが、避け様のない空中で捕まったら終わりだ。


神経を集中するのに少々時間が掛かるが、やはり“闇溶け”で逃げる他無い。

焦燥に駆られている今、集中するなど出来る訳が無いが……。


その瞬間、大きな獣型の影が一度に五、六匹、二人に飛び掛かった。

―――避けきれない。

二人は死を覚悟した。












「―――愚か者めが」




影の呻き声の中で、はっきりと耳にしたのは………女の声。



目前にまで迫って来ていた大きな影が、何も無い空間から現れた巨大な刃によってあっという間に一刀両断された。


真っ黒な、どろどろとした雨が降り掛かる。




何が起こったのか、二人には皆目検討がつかず、ただただ唖然とした。

そんな二人は………思い切り、誰かに背中を蹴られた。

おわあ―っ!、と情けない声を出す二人。

「―――ぼさっとするな!!剣を構えろ!…食われたいのか!!」

振り返るとそこには、隊の中で忌み嫌われている、かの有名な第4部隊隊長が………物凄く恐い形相で立っていた。


………背丈も社会的立場でも低い少女だが…凄まじい殺気を放っている。