亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

促されるまま、マリアはドアを通り抜けた。
その時、背後からベルトークの低い声が聞こえた。

「―――怖くないのか」





マリアは振り返った。ベルトークの鋭い視線が突き刺さって来る。

「……何がですか?」

「―――……無になることが」






無になる。






無とは………。



……マリアは小首を傾げて、微笑んだ。







「………いいえ」










マリアはそう言って、部屋を後にしようとした。









その途端、前に行こうとした身体が、意思とは違う力によって引き戻された。

―――肩を掴まれた。


「………?」

マリアは少し驚いてベルトークを見上げた。

正面のこの男は、ただ無言でマリアを見下ろしていた。












「………何故…笑う?」







ベルトークは呟いた。

マリアは一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。







「………あの………ベル…」

「………貴女は………何故笑うのだ」
























マリアの肩を掴んだ手は、そのまま彼女を壁に向かって押し出した。
壁とベルトークに挟まれたマリアは、驚いて顔を上げた。