「………ベルトーク隊長………その………昨夜の襲撃のことですが…………………申し訳ありませんでした……」
マリアは深く頭を下げた。
あの“解放”をした襲撃の夜、撤退命令を伝えに来たジスカに続いて、ベルトークも来たのだ。
ダリルとイブがいくら呼んでも何も答えられない程、マリアはその時意識が混濁していた。
感じるのは枝が足下から伸びていく感触と、敵の身体を貫く生々しい温かさだけ。
目を開けているのに、視界には何も映らない。
………自分が何であったか、分からなくなってきた。
………私は?
………私は………一体…。
突然、鋭い痛みがマリアの意識を引き戻した。
頬に感じるピリピリとした鈍い痛み。
何度か瞬きを繰り返し、ぼんやりと前を見ると………………。
…………無表情のベルトークが立っていた。
「―――撤退だ。…………“解放”を止めなさい」
低いテノール声が頭に響いた。
伸び切った赤い枝は、勢いを無くし、徐々にマリアに集まって行った。
「―――はい…」
無意識でそう呟いた。

