亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



「………ベルトーク隊長………その………昨夜の襲撃のことですが…………………申し訳ありませんでした……」

マリアは深く頭を下げた。




あの“解放”をした襲撃の夜、撤退命令を伝えに来たジスカに続いて、ベルトークも来たのだ。

ダリルとイブがいくら呼んでも何も答えられない程、マリアはその時意識が混濁していた。


感じるのは枝が足下から伸びていく感触と、敵の身体を貫く生々しい温かさだけ。


目を開けているのに、視界には何も映らない。



………自分が何であったか、分からなくなってきた。




………私は?








………私は………一体…。

















突然、鋭い痛みがマリアの意識を引き戻した。


頬に感じるピリピリとした鈍い痛み。

何度か瞬きを繰り返し、ぼんやりと前を見ると………………。



…………無表情のベルトークが立っていた。





「―――撤退だ。…………“解放”を止めなさい」











低いテノール声が頭に響いた。


伸び切った赤い枝は、勢いを無くし、徐々にマリアに集まって行った。





「―――はい…」


無意識でそう呟いた。