亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

「―――このっ…!!」

……気持ち悪い!

振り払おうとするが、もがけばもがくほど絡み付く。

見兼ねた仲間の一人が、剣を下げて近寄って来た。

「おい………!なんとかしろよ!………クソッ………離れねえ…」

「下手な切り方をするからだ………あんまり動くなよ。今すぐ………」

………声が途切れた。その途端、苦笑する仲間の顔が………硬直した。
彼の視線は、自分を通り越したその先…。

「―――…どうした?…何か……」

―――ぱっと前に向き直る。








―――今目に映る風景は、今まであった密林の景色では無かった。






真っ黒。







視界いっぱいに広がるのは…………丸い、牙が隙間無く並ぶ………口だ。





血の臭いがする。腐臭が溢れている。







―――ああ。











―――醜い















―――………一瞬で、血腥い闇に包まれた。




目の前が真っ暗になった時、何も考えられなくなった。




どんなに目を凝らしても、何も見えなかった。