「―――なんでだよ……なんでだよ………どうして!!」
城がそびえたつ丘の周りだけが、見えない透明な壁でぐるりと覆われていた。
いくら叩いても、殴っても、切り付けても、全て弾き返されてしまう。
傷一つ無ければ汚れさえ付かない。
城の扉もいつの間にか固く閉じられていた。
城壁内は、瓦礫と死体でいっぱいだった。鼻を付く焼け焦げた様な異臭。
そんな中で、キーツは両手の握り拳を空しく透明な壁に叩き付けていた。
―――中には………皆いるのだ。
見渡す限り、城から吹き飛ばされたのはどうやら生きている者だけの様だった。
亡骸は城内にそのまま。
いくら探しても……………彼女の姿は何処にも無かった。
………悲し過ぎる現実が目の前に映し出されても、キーツは彼女を救いたかった。
―――ローアン………ローアン……。
そんなキーツを、アレクセイは後から見つめていた。
城壁の隅に横たわらせていたオーウェンの様子を見ながら、アレクセイは何も出来なかった無能の自分と、惨劇の数々に、怒りで震えていた。
すると、傍らの瓦礫の山が、突然ガラガラと崩れた。
キーツは驚嘆の声を上げた。

