「―――お母様……私………怖い」
暖かい母の腕の中で、ローアンは母を見上げて言った。
カルレットの周りに、真っ白な光が渦巻いていた。
三人の守人は、カルレットを囲む様に並び、各々が複雑な呪文を唱えていた。
クライブは一歩後退した。
何度カルレットに剣を振り下ろしても、見えない壁によってことごとく弾き返された。
しかし、今はそれどころでは無い。
城の至る所が真っ白に輝き始め、徐々にその光は増していく。
「………鍵………だと?」
「……総団長……………ここは一旦……」
背後でベルトークが退避を促した。
………何かが起きようとしている。
それは間違いない。
「―――お…母様………」
「―――ローアン………大丈夫よ。心配しないで。怖がることなんて何も無いわ…」
カルレットはローアンを再度ぎゅっと抱き締めた。
目尻に溜った涙を隠そうともせず、カルレットはローアンを愛しげに見詰めた。
「………大丈夫………大丈夫よ……………痛くなんてないから。………痛みなんて………感じないから………ね?………ローアン………平気よ………」
ローアンは母の胸に顔を埋め、静かに目を閉じた。

