亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



遠くに見える彼女は王の腕の中で、震える小さな口を動かした。











―――…『キーツ』

















呼ばれた様な気がした。

大粒の涙を流し、頬を濡らして、僕を。







殺される。







彼女が。











ローアンが。


















……みんな……この男のせいだ。

この男さえいなければ。






みんな………。











―――殺さないで!








―――充分だ………充分だろ……!!












「―――っ……クライブ!!」




キーツは剣の柄を両手で握り締め、叫びながらクライブに向かって走った。

急に突進して来たキーツに、ゴーガンは好都合と言わんばかりに立ち止まって剣を構えた。



「――ぁぁああああああああ!!」


キーツは一心不乱に走った。




死んでもいい。





僕はいいから。









だから。











もう止めてくれ。







彼女を…………殺さないで!!









僕は……………………死ぬ……。



「あああああああ!!………っ!?」