亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



ようやく立ち上がることが出来たルア。
しかし充分に回復していないのか、足下がおぼつかない。

床に立てた爪がカチカチと鳴る。



ローアンは母の腕の中にいた。

母の身体の震えが、直に伝わってきた。
………目の前の男。
国家騎士団総団長であるこの男が姿を現した瞬間から、母の様子がおかしくなった。


二人の間に、いくつか言葉が交わされたが、よく聞こえなかった。



「………終わりだな………カルレットよ………いや…………………………フェンネル王」

ゾッとするような冷たい笑み。
ローアンは激しい寒気と恐怖に堪えていた。




…………ねぇ…お姉様………痛かった?

死ぬ時………痛かった?

死ぬって……何かしら?



………嫌………死にたくない。

死にたくないの。








「………クライブ……と……名を変えたのね。………ええ…私の負けよ……貴方が相手では……私の魔法など…」

絶体絶命のこの状況下で、カルレットは綺麗な口元を緩めた。



「………物の数分も…保たないでしょうね………しかしクライブ………」


カルレットがクライブをきっと睨み付けると同時に、二人の間に三人の老人のシルエットが煙の様に突然現れた。