ようやく立ち上がることが出来たルア。
しかし充分に回復していないのか、足下がおぼつかない。
床に立てた爪がカチカチと鳴る。
ローアンは母の腕の中にいた。
母の身体の震えが、直に伝わってきた。
………目の前の男。
国家騎士団総団長であるこの男が姿を現した瞬間から、母の様子がおかしくなった。
二人の間に、いくつか言葉が交わされたが、よく聞こえなかった。
「………終わりだな………カルレットよ………いや…………………………フェンネル王」
ゾッとするような冷たい笑み。
ローアンは激しい寒気と恐怖に堪えていた。
…………ねぇ…お姉様………痛かった?
死ぬ時………痛かった?
死ぬって……何かしら?
………嫌………死にたくない。
死にたくないの。
「………クライブ……と……名を変えたのね。………ええ…私の負けよ……貴方が相手では……私の魔法など…」
絶体絶命のこの状況下で、カルレットは綺麗な口元を緩めた。
「………物の数分も…保たないでしょうね………しかしクライブ………」
カルレットがクライブをきっと睨み付けると同時に、二人の間に三人の老人のシルエットが煙の様に突然現れた。

