亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~











赤く染まった大理石の床に、父の頭を割れ物を扱う様にそっと置いた。


涙でぐっしょりと濡れてしまった袖に、再度目を擦りつけた。







「……………父上…………」



僕は………どうすれば良いのでしょうか?


教えて下さい。


……どうか僕を…導いて下さい。





―――独りは嫌だ。







父上………僕はまだ……子供です。

父上の様に……自分で全てを決めることは出来ません。







キーツは涙で歪んだ視界の中、物言わぬ父の顔を見詰め続けた。










………何も語らない父。















………いや………。










父はきっと………生きていたとしても………。











………何も教えてはくれないだろう。

























キーツはふらふらと立ち上がった。


息絶えても未だにしっかりと握られた剣。
その右手から剣を引き抜き、キーツは踵を返して謁見の間へと続く廊下を走り始めた。




振り返らなかった。












ここで父を見れば………叱られる気がした。