赤く染まった大理石の床に、父の頭を割れ物を扱う様にそっと置いた。
涙でぐっしょりと濡れてしまった袖に、再度目を擦りつけた。
「……………父上…………」
僕は………どうすれば良いのでしょうか?
教えて下さい。
……どうか僕を…導いて下さい。
―――独りは嫌だ。
父上………僕はまだ……子供です。
父上の様に……自分で全てを決めることは出来ません。
キーツは涙で歪んだ視界の中、物言わぬ父の顔を見詰め続けた。
………何も語らない父。
………いや………。
父はきっと………生きていたとしても………。
………何も教えてはくれないだろう。
キーツはふらふらと立ち上がった。
息絶えても未だにしっかりと握られた剣。
その右手から剣を引き抜き、キーツは踵を返して謁見の間へと続く廊下を走り始めた。
振り返らなかった。
ここで父を見れば………叱られる気がした。

